ある日、一斉に街じゅうの花壇が冬景色となる。商店街のウィンドーがもみの木の枝のような装飾で飾られる。シャンゼリゼを初め、いろいろな通りで白色豆電気のイリュミネーションが輝き始める。仕事がのろい人々(南仏に暮らしたピーター・メイル氏の著作の中にもあったけれど、フランスの職人さんたちの急がないことはとても有名!)が汚名返上とばかりに、たった一日でノエル(フランス語でクリスマスのこと)のための「化粧直し」を成し遂げるのは、本当に驚きである。
なんでも、「その日」はパリ市できちんと決められているらしく、とにかく、あちらもこちらも、ある日突然、街はすっかりクリスマスモードになっていて、まるで、夢から覚めた浦島のような気分になる。
最近は、白いペースト状のものを吹き付けた、まるで雪をかぶったようなもみの木が流行っているようで、植え込みに、それが並ぶと、「夜中に雪が降ったのかしら?」という錯覚にも陥る。パリの12月は冷たい空気がピーンと張っていて、雪こそめったに降らないのだけど、樺太と同じ緯度の高さを実感するのも、そんな時だ。
デパートや街中のブティックが、クリスマス商戦ということでにぎわうのはどこの国も同じようだが、住宅地の小さなお店やマルシェも、それなりに「演出」されて、大人も子供もなんとなくはしゃいでいるような雰囲気になるのが12月のパリかもしれない。
我が家の近くの教会の横の、少し太い歩道に、にわか《クリスマス市》が出現するのに気がついた時は、とてもうれしかった。それは、毎日パンを買いに行く、ビナールさんのお店の、一本横の通りだから、帰りに遠回りをして、必ず市を覗いてみる。 |