行きたいけれどなかなか行かれない所、がある。
「別にいまさら」とか「きっとそのうち」とか・・・・いろいろ理由はあるのだが、ホントは、そこのことを誰かに言ったら笑われそうだし、大体、忙しい合間にちょこっと行ってみる、というわけにはいかない‘特別な’場所だからである。
でも、そこに近づくことはしばしばあるので、私はいつもいつも、「今度こそ」と思い、何年もの月日が流れてしまった。
「そこ」にはなかなか行かないけれど、そこの代わりによく行く所がある。
それは、なんの変哲もない、パリの道路の一つだが、動物好きの私にとっては、とても意味のある場所。セーヌ河畔の右岸、ケ・ド・ラ・メジスリという名前の200メートルほどの道である。
セーヌにかかるポン・ヌッフ(‘新しい橋’という名の一番古い橋)の、昔、サマリテーヌというデパートがあったあたりから、川の流れに逆らって、市庁舎に向かって歩いていく。このあたりの、川沿いの歩道(車道の右側)にはブキニスト(古本屋)が並ぶので、それをのぞきながら歩くのも楽しいが、車道の左側の歩道を歩くと、いつの間にか、ピーピーとかきゃっきゃっとか、人の声とは違う声が聞こえてくる。そして歩道が突然、緑で覆われてしまう。
所狭しと植木鉢が並ぶ中を、人々がゆっくり立ち止まりながら、そして時には店の中に入ったりしながら散歩している。ここに来る人たちは、もちろん、商店での買い物が目的の人も多いだろうけれど、私のように、ひやかしの客も多いはずだ。特に小動物を扱う店舗には、子供連れの家族とか若い人たちもたくさん訪れ、ケージや水槽を熱心に見つめている。ひやかしと言えば聞こえは悪いが、要するにどうしてもどうしても動物たちを「見たい」のである。多分。少なくとも私はそうだ。
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