パリ大好き人間の独り言、きたはらちづこがこの街への想いを語ります。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
第4回 雪 2003.2 エッセイ・リストbacknext


17年ぶりの2回目の駐在だと言うと、多くのフランス人が「この国のどこが変わった?」と聞いてくる。

17年の間に未来都市のようなデファンスが出来上がり、オルセーが美術館として再再出発し(オルセー宮跡を19世紀末にオルレアン鉄道が買収、駅舎とした)ルーブルのガラスのピラミッドも完成した。しかし、それはパリ全体からしたらあまり大きな変化ではない。以前私達家族が住んでいたアパルトマンも、もっと以前夫が子ども時代(40年も前のこと)に住んでいたアパルトマンも健在。2−300年を経た建物も多いのだからむしろ「なにも変わっていない」と答えるほうが感覚的には適切である。


筆者自宅より撮影

でも、「なんにも」というと相手はちょっと不満そうな顔をする。どこの国の人も、「昔は・・・」と変わり様を話題にするのが好きらしい。
だからというわけではないが、返事をするために変化したところをいろいろ考えてみた。
まず一番に言えることは英語を話す人が増えたこと。フランス人は高慢だから解っていっても英語を使ってくれない・・・と嘘か本当かしらないが、以前は確かに英語は空港とか大きなホテルくらいしか通じなかった。今は街中のお店やレストランならほとんどどこでも英語が通じる。
天気。これは世界的傾向か。日本の友からの夏の便りに「温暖ではなく、間違いなく亜熱帯です」とあったが、パリも同様、以前はほとんど夏が来なかったものが、最近はしっかり夏がある。20年前は避暑というより求暑という感じで南仏に下りたものだが・・・。
それによく雨が降る。以前は傘を持っていなかったのが不思議なくらいだ。一昨年の春引っ越してきた頃も誰もが半年続く雨を嘆いていたし、1911年のパリの大洪水(セーヌの氾濫)が話題になっていた。セーヌの水位は日に日に高まり、川沿いの自動車道は長いこと通行禁止となった。もちろん、観光客に人気のバトームッシュ(セーヌ遊覧船)も5月まではお預け。雨は昨年もヨーロッパ中を荒らしまわり、チェコやドイツの大洪水のニュースは世界中を駆け巡ったはずだ。フランスでも、またあちらこちらで洪水であった。
そして今年は年明け早々から雪がよく降る。こんなに降るのは40年来とニュースが言っていた。パリの雪は本当に珍しく、私も初体験だが、パリの街も雪には弱い。多分東京以上に。だから飛行機の離発着は大混乱していたし、凍てついた歩道に閉口した。「雪かきスコップの一本くらい、四つ星ホテルは持っているべきだ」とはちょうどその時旅行で来ていた友人の弁である。でも、やはり天から舞う白いものはなんとも言えない静謐な雰囲気をかもし出し、ちょっと心を揺さぶられた。

パリに雪景色は似合うか・・・。スイス・イタリアとの間にアルプスを、スペインとの間にピレネーを持つフランスで、雪の美しさは「山」には勝てないと思う。印象派の画家たちも競って雪景色を描いた。が、そのほとんどは田舎の風景だ。


ピサロ『外郭ブールバール・雪効果』

ただ珍しいことに、ピサロが1879年に『外郭ブールバール・雪効果』という雪の日のパリを描いている(16区マルモッタン美術館所蔵)。
美しい家並みと街路樹が続く大通りの真ん中で「おっとっと!」とバランスをくずした男の丸い背中、乗合馬車にあふれる人々、その馬車の横を急いで渡ろうとする女性、歩道で立ち話の男女、その向こうには犬もいて、にぎやかだ。なんとなく滑稽で楽しげなパリの街角。そう、やっぱりパリには雪は似つかわしくないのかもしれない。

  

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