パリで活躍する素敵な方々にインタビューし、それぞれの「モンパリ」をお聞きします。



セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
光に魅せられて 
その2、パリで光のとりこになった、だからパリにいる。 2007.03

観光都市パリの中でも、最も有名なスポットの一つ「ノートル・ダム大聖堂」には、毎年1200万人の観光客が訪れます。そのライトアップ・デザインに、日本人女性が参加していたということをご存知でしょうか?
ライティング デザイナー石井リーサ明理さんは、フランスを代表する照明デザイン事務所ライト・シーブル社で、チーフデザイナーとして、世界中の数々のモニュメント、イベントなどのライティングをデザインし、独立後の現在も、東京とパリを拠点に活躍しています。そんな石井さんが魅せられたパリとパリの光についてお聞きしました。

石井リーサ明理さん
1971年 東京生まれ。
1994年 東京芸術大学美術学部卒業
1996年 東京大学大学院総合文化研究科 修士課程 修了
その間、ロサンジェルス、パリにてデザインを学ぶ
1996年 ハワード=プランストン&パートナーズ社(ニューヨーク)にて研修
-1998年 石井幹子デザイン事務所(東京)スタッフデザイナー
-2003年 ライト・シーブル社(パリ)チーフ・デザイナー
2004年 株式会社I..C.O.N.設立
フランスにもフランス法人I.C.O.N.sarl設立
 ■ Interview つづき インタビューのはじめへ

7、仕事でも、プライベートでも、人種や言葉の壁を感じたことはありますか?
 アメリカとフランスでの留学経験から、英語とフランス語をマスターしていることが、フランス就業ビザの取得の決め手になりました。どうやってマスターしたかというと、一生懸命勉強したとお答えするしかなく、また、おしゃべりな性格が幸いしているのだと思います。
仕事を始めた頃は、言葉よりもメンタリティーの違いにギャップを感じることの方がしばしばでした。
ライト・シーブル社に入社した当初、気を利かせて流しのコーヒーカップを洗ったら、「なぜそんなことをするの?君はそんなことのために雇われているのではないのに?」と不思議に思った同僚に言われました。また、プロジェクトが目白押しで、夏のバカンスをついつい取りそびれた時も、「バカンスを取るのは当然の権利なのに、ひどい会社だ」と私のために腹を立ててくれた同僚もいました。必要な仕事をし、当然の権利を獲得するフランスは完全な「契約社会」なのです。
仕事の中では、意見をどんどん言う。邪魔にならないようにとか、立場を逸脱しないように、と考えるのはもってのほか。黙っていては、意見がない、能力がないと思われても仕方がないのです。
また、フランス人は、言いすぎて感情的になることもしばしば。
アジアの仕事のときは、アジア人の婉曲な表現をフランス人に説明し、逆にフランス人の感情的な態度に驚くクライアントを安心させるのも私の役目の一つでした。

8、 現在は、ライト・シーブル社から独立し、フリーランスとして東京とパリを拠点にご活躍ですが、どのくらいの割合でパリに来られるのですか?
 三分の二はパリです。パリから世界各国に出かけることもしばしばで、スペイン、スイス、ドイツ、メキシコ、シンガポール、台湾、アフリカ、中東にもプロジェクトや公演に呼ばれます。照明の分野も、イルミネーションから、イベント、舞台、室内、建築、ランドスケープ、都市のマスタープランニングなど様々です。これからもどんどん新しい分野に挑戦して行きたいと思っています。

9、 オスマン風のアパルトマンにお住まいだそうですが、生活の中では、どんな風にひかりにこだわっていらっしゃるのですか?

 どうせパリに住むならと、暖炉、フローリング、壁と天井が漆喰のくり型レリーフで縁取られたこのタイプのものにしました。実際に住んでみると、建物が古いだけに、インフラが老朽化していて、トラブルもしばしばです。しかし、もちろんそんなチャーミングなアパルトマンですから、間接照明で天井のレリーフを浮き上がらせたり、暖炉に薪の変わりの大きなキャンドルをたくさん置いたり、さまざまな方法で演出をして楽しむこともできます。招く人や季節に合わせて、アクセント照明を変えたり、生活の中での光の演出は欠かせません。そもそもフランス人は、日常的に光の使い方に非常に敏感で、殆どの家庭が、間接照明を使って、部屋全体のやわらかな雰囲気作りに気を使っています。そのセンシビリティーの高さが、質の高い街の照明の基礎になっているようです。

10、 大変お忙しい毎日をお過ごしのご様子ですが、プライベートタイムはありますか?パリの生活をどのように楽しんでいらっしゃいますか?
 現在は、休暇は殆どなく、仕事ばかりの毎日ですが、忙しくても、週末に人をもてなしたりする他ダンスを習いに行ったりしています。
時間ができればオペラに行くのが大好きです。舞台は、照明器具などを隠してしまい、純粋な光と影の美しさのみを追求できる分野ですから、光の純粋な効果そのものに立ち帰ることが出来ます。
休暇のときも、照明の勉強?と思われがちですが、光のとりこになった宿命でしょうか。
私に光の魅力を教えてくれた「光の街(ヴィル・ド・ルミエール)」パリでは、光に魅せられない時はありません。

【パリの光メモ】
■エッフェル塔の「光」が一番輝くとき
午前1時〜1時10分まで
(下の写真は午前0時のもの)
エッフェル塔のライトアップは午前1時まで。塔の投光照明が消え、姿が見えなくなっても、1時から10分間は、毎時ジャストに光るパチパチした照明だけがシャンパンの泡のように光る。

■ルーブルの中庭
ピラミッドの中庭から、チュルリー公園の反対側に進み、建物の間から中庭に入ることができる。建物がやさしい光に包まれる空間。


■比較をすると対照的なコンコルド広場とヴァンドーム広場

ヴァンドーム広場はひっそりと落ち着いた雰囲気。

コンコルド広場は、きらきらと輝くような躍動感。


ノートル・ダム隣のカフェでお話をお聞きしました。
 日本人離れした長身、まっすぐな黒髪、優雅なファッションでさっそうと現れた石井さん。落ち着いた雰囲気と、人を飽きさせないお話し上手なお人柄で、同席する人を心地よくしてくれます。
 彼女が、日本人女性として照明デザインの第一線で世界を舞台に活躍しているということは、 同じ日本人女性として誇らしい気持ちになりました。
 お話しの端々に、照明デザインのお仕事が楽しくて仕方がない、という気持ちがよく伝わってきて、彼女自身が光を放っているような気がしました。
これからも、新しい挑戦をたくさんして、素敵な光を世界中にともしてくださいね。
その1 光の面白さを教えてくれたパリ
【back number】 vol.1 パリは私を放っておいてくれる街 平沢淑子さん
  vol.2 パリのエネルギー源は人間関係 芳野まいさん
  vol.3 エール・フランスパイロット 松下涼太さんに訊く
  番外編 ワイン評論家 “ジャン・マルク・カラン“に訊く
  vol.4 全てが絵になるパリの景色の中で 寺田朋子さん
  vol.5 マダム・ボ−シェに聞く
  vol.6 日仏交流の最前線で
  vol.7 パリで育ち、世界に羽ばたく 山田晃子さん
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