“同世代では最も偉大な画家の一人”といわれる赤木曠児郎さん。40年来描き続けたパリの街は、芸術作品としてはもちろん、貴重な歴史的資料としても認められています。1993年パリ市と東京都友好都市提携10周年や、2008年日仏交流150周年の記念行事としても特別展が企画されるなど、日仏を結ぶ文化大使的な存在ともなっている赤木画伯に、渡仏から現在の制作活動に至るまで、パリのアトリエでお話をお聞きしました。
6、街でのデッサンや、アトリエで大きなキャンパスに向かう時間など、制作には一定のペースがあるのでしょうか?どのように作品に取り組んでいらっしゃるのですか? ペースはやっぱり、街に出てっていうのが基本だな。雨が降らない限り、毎日。雨だと、アトリエから外の景色を見て描いて。午後は油絵に取り組んだりね。冬も外で描きますよ。冬の街がまたいいんだ。日が短いからすぐ暗くなっちゃって、長くは描けないけれど。寒くないようにしてね。冬にスウェーデンに行っても寒くないようなのを買ったんだ。手も手袋をしてね。 常に街の風景は描きつつ、人物や静物画、空想画とか、色々な作品を平行して描いているよ。空想画の時には、建物のように水彩デッサンはしないな。キャンパスに直接絵の具を塗って描いていく。でも、ひとつの作品を仕上げるのには、時間がかかるよ。油絵は、1回塗ったら、次塗るまでには、乾かすのに1ヶ月おきなさいっていう。それを間違えるとひびが入る。油絵っていうのは、地を描いて、その上にまた描いて、また描いて。常に描くからね。1回塗った上にまた線を描いて。 それに、頭の中が、切り替えが大変だ。いくつかの作品に同時にかかっていると。だから、色んな展覧会に出すんだ。だって、約束したら作らなきゃいけないから。まぁいいや、まぁいいやって思っていると、いつまで経っても終わらない。最後はそれだけを集中して一気に仕上げるけれど、そこに行くまでは、時間がかかる。最初から1つだけに取り組んで仕上げたいんだけど、それに向くまでに、時間が必要なんだ。自分の中で、熟成しないといけない。チーズみたいなものだよ(笑)。
vol.9 音楽の都・パリのピアニスト ジャン・ルイ・ ベイドンさん
vol.10 光を求めて マリー・ジョゼ・ラヴィさん
vol.11 「ミラベル Mira-Belle」帽子で世界一周とタイムトリップを