パリ在住の料理研究家が、カジュアルから、
本格派グルメレストランまで、穴場情報を紹介します。




セ・サンパ
感じいい!親切!ちょっと贅沢!「セ・サンパ」とパリジャンは表現します。そんなサンパなパリを、ほぼ毎週更新でご紹介しています。
第1回 「LE DOME DU MARAIS」 2002.9

 今年の春、ミシュランの3星に昇格したお祝いを言いに行かなきゃ!と、かつての仕事先であるシャンゼリゼの「ルド ワイヤン」を久しぶりに訪れた。
 シェフやメートル、キュイジーヌで働くかつての同僚達と再会を喜び合い、近況報告をしあう。 「最近はどうしてるの?」との問いに「マレでアトリエをやっています。 フランス料理や日本料理のクラスをやったり、ケータリングをしたり...、フロマージュとワインのクラスもやってる...。」と答えながら名刺を渡すと、シェフが言った。 「あれ、あなたのアトリエはRue des Francs Bourgeois じゃないか! この通りのレストランで僕の古い友人がシェフをやってるよ。 "le DOME du MARAIS"っていう店。ぜひ行っておいで。」

  同じ通りにある、といっても、私のアトリエはヴォ―ジュ広場寄り、レストランはHOTEL DE VILLE寄りにあるので、メトロ1駅分はゆうに歩く。 アトリエで待ち合わせた友人達と、通りに並ぶ店を覗きながらのんびり歩いて目指す店に向かう。
 「こんにちは、予約してますMME. FRANCKです。」というと、若いセルヴィスの男の子が満面の笑みで「お待ちしてました!どうぞ!」と席に案内してくれる。 時間が早かったせいか、レストランの手前にあるサロンにはまだお客さんは誰もいないし、奥のサロン(ドーム)にも2組のカップルがいるだけ。 そのがらんとした感じが一層ドームの高さや広さを際立たせる。 「素敵なお店!」 「天井がすごいねー。」と口々にいいながら店内を見渡たす。 入り口に小さな中庭風の席がいくつかあり、奥のサロンに入ると中心が吹き抜けになっていて、その周りをぐるっと1階席が囲んでいる。 ちょっとオペラの劇場みたいな感じ、って言ったら大げさすぎるかな?

 アペリティフを頼むと、アペリティフ用のアミューズが登場。 カリカリに焼かれたフィセルの薄切りに、栗のハチミツがぬってある。 それに、レンズマメのペーストとナスのキャビア。 「ちょっと、これはお料理も期待できそう!」と嬉しくなる。 メニューを選びながらアペリティフとアミューズを頂くこの時間がなにより好き。 しかも出てきたものが美味しいとなると、なおさら料理への期待が高まってドキドキしてしまう。

 前菜に「ハーブの冷たいスープ」 メインに「ア―ティーチョークのファルシ、仔羊のリーとジロル茸」 デセールは「さくらんぼとフロマージュブラン」を選び、注文を住ませて客席に目をむけると、あっという間にほぼ満席になっている。
 込まないうちに、とセルヴィスの男性を呼んで「あなたのシェフと私がかつていたお店のシェフがお友達って聞いて来たんですけど...、シェフにご挨拶に行ってもいいですか?」と頼むと、「もちろんです。ところであなたはどこのお店にいたの? ルドワイヤン! キュイジーヌにいたの!?」と楽しそうに聞きながら案内してくれた。 サロンの中ほどにあるドアを開けると、シェフが出てきてくれて、ご挨拶。 「同じ通りでアトリエをやっています。」と言うと「ぜひ遊びに行くよ!」と嬉しいお返事。 忙しい時にあまりお邪魔しては悪いから、「ぜひ来てくださいね。」とだけ言って早々に引き上げる。

 先ほどのセルヴィス君にお礼を言って席に戻ると、前菜の登場。 春らしい色の、なんとも美しい盛り付けのお皿達の登場で、嬉しくなってしまう。味も、上品ですっごく美味しい!
 「わーい、うれしいなっ。」と心の中ではしゃぎながら、メインの登場を待っていると、運ばれてきたのはお皿に乗った巨大なア―ティーチョーク!まずは周りの葉を取って、添えてあるヴィネグレットにつけてちゅちゅっと吸って食べ始める...けど、終らないよー、大きいんだもん! 3,4枚の葉を食べた(吸った?)ところで、外側から食べて行くのはあきらめて、中心に入ってるリー・ダニョーとジロルに取りかかる。「わっ、美味しい♪」。 あまりの美味しさに、友人にもおすそ分け。
 デセールの頃にはすっかりお腹がいっぱい。 「軽めのを選んでおいてよかったー。」と思いながらシロップ煮のさくらんぼとフロマージュブランを結局ほとんど残さずにたいらげる。

 コーヒーを頼むと、可愛いフィナンシェもやって来た。 「もう、お腹一杯!」と言いつつ、ついつい手がのびてしまう。

 そろそろ行こうか、と頼んだラディッションは、3人で150ユーロしないぐらい。 アペリティフ、ムニュ(前菜・メイン・デセール)、ワイン、ミネラル、コーヒーでこの値段、このレベルの味、内容のお店ってPARISではそんなに他にないと思う。 客層やお店の雰囲気も気取りのないかんじで、でもリラックスしすぎない。 テーブル間も狭すぎないから、くつろげるし。 サービスも、エレガントとは言いがたいけれど一生懸命だし、笑顔で楽しくさせてくれる。
 「近いうちに絶対また来よう!」と心に決めてお店を後にした。

LE DOME DU MARAIS
53 bis Rue des Francs Bourgois 75004 PARIS
Tel: 01-42-74-54-17  定休日: 日・月
筆者プロフィール

さくら FRANCK/ sakura FRANCK

東京都内のカフェ及びレストラン勤務の後、フードコーディネイターアシスタント等、「食」関係の仕事を経て渡仏。 パリの料理学校「Le Cordon Bleu」卒業後、フランス各地のレストランにて修行。 (「ルドワイヤンLEDOYEN」〜パリ8区、ミシュラン3星〜料理担当、「ヴィラ・デ・リス Villa Des Lys」〜カンヌ ホテル・マジェスティック内 ミシュラン1星〜料理及びデザートを担当)。 その後、パリ市内1星レストラン勤務を経て独立。仏料理の他に、台湾中華料理、薬膳のディプロマも所有。 現在パリ在住。 自身のアトリエで食に関する様々な活動を意欲的に展開中。
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