<現代写真の父>と称されるウジェーヌ・アジェ(1857~1927年)。本展は、1898年から1927年の間にアジェが撮影した<パリ>、230点余を公開するものです。
古き良きパリ、しかし、ベルエポックと呼ばれる典型的な文化・芸術発展の様子を切り取ったものではなく、”資料” として、通り、公園、セーヌの畔、商店、パブ、行商・・・など、当時のパリの街、パリの生活を垣間見ることのできる作品ばかりです。会場に設けられたパリの地図には、アジェの撮影ルートが記されています。各写真のキャプションにも通り名が明記されているので、20世紀初頭と、今現在での変化(または不変)を確認しに行きたくなってしまいます。
アジェは、ボルドーに程近いリブルヌ出身の写真家です。役者や画家を目指すも大成せず、40歳頃から写真を本格的に生活の糧としていったのは、多くの画家や建築家、デザイナー達が、資料写真を必要としていることを認識したためでした。ブラック、ユトリロ、フジタ、ヴラマンクといったアーティストや、国立図書館など、重要な顧客を持ちましたが、第一次世界大戦の最中や、その後は活動停止状態が断続的に続くこともあり、70歳で没するその時まで生活は貧窮しました。
芸術の追究ではなく資料としての作品が多かったため、生前のアジェは、一般には知られることのなかった存在でした。今日、克明な記録を宿した膨大な写真は、カルナヴァレ美術館(9000枚)や国立図書館(4000枚)などが多く所蔵し、回顧展が盛んに開かれています。
20世紀初頭のパリへ、タイムトラベルしてみませんか?
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Chanteuse de rue et joueur d'orgue de Barbarie
1898
Angle des rues de Seine et de l’Échaudé, 6e arrondissement
1924
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