「ママと娼婦」を語るとき、人は饒舌にはなれません。3時間40分と異様に長い上映時間、挑発的なタイトル、当時のカンヌで賛否両論(審査員特別賞受賞=委員長はイングリッド・バーグマン)だったこと。16ミリのモノクロ撮影、音楽なし、全編同時録音、など、およそ商業映画らしからぬテクニカルなこと。ゴダールに“発見”され、最後のヌーヴェルヴァーグとまで呼ばれ、そして43歳の若さでピストル自殺した監督自身の個人史。語ることは多いはずなのに、実際人はこの映画について多くを語るのに、否、それらの言葉は空しく響くだけです。映画だけがそこにある。圧倒的なまでの役者達の存在感、70年代の時代の痕跡、そしてフィルムの表層から時に不協和音を奏でながら放たれる、痛々しいまでに必死な若者たちの愛。これらが渾然と一体となり、映画館の闇を満たします。30年の時間を経て、全く古びることのない映画。いつも心のどこか大事な場所に居続ける映画。是非御覧になってください。
ママと娼婦/ La Maman et La Putain 監督:ジャン・ユスターシュ 同監督の他の作品も上映
Action Christine 4 rue des Christine 75006 Paris TEL: 0143 29 11 30
ママのような女、娼婦のような女。